とらんくすや。親父の小話
お客A『よう ちょいと おめえさん
浅草にえれぇ面白い店が出来たの知ってるかい?』
お客B『よぉ、なんだいそりゃ?面白れぇ話というからにはこちとら辛抱ならねぇ。
ちょいとお前さんの話とやら聞いてみようじゃねぇか。』
お客A『「とらんくすや。」てぇ言うんだよ』
お客B『何だい、そりゃ?そんな店の名は聞いたことがねーな。まさかよぅ、 男物のパンツのことじゃあるめえな?』
お客A『そのまさかだよ、お前さん。正真正銘、猫灰だらけ、男のパンツだけを売ってやがるんだ。
こりゃ面白れぇ、こりゃ浅草らしいぜぃてぇんで、百聞は一見に如かず。
店ん中へ入ってみたらもうびっくりよ!?
そこにゃあずらぁっと粋な柄の男のパンツが勢揃いしてやがんだ。
しかも、なんと常時色んな模様のパンツが100種類以上も揃ってるんだぜ!?
柄もしょっちゅう入れ替わって再生産はなしってことで、こちとら息つく暇もねぇってもんよ。
和柄の男のパンツだけを売っている店なんて見たこと無いね。
こりゃあ一丁試しに買ってみようと思うってもんよ。
それにこっちゃあ近々温泉に行かなけりゃならねぇ。
温泉といやぁ、野球拳で美女との勝負もあるだろう?
そんな男の晴れ舞台に恥ずかしいモンは身に着けていけねぇわけよ。
社長と勝負、部長と勝負、課長と勝負、同期と勝負、競馬で勝負、パチンコで勝負、嫁さんとも時すら勝負と勝負だらけの人生だ。
男の人生常に勝負だからよっ!!
おおっと、ショウブっていっても、お花の菖蒲(しょうぶ)じゃないよ?
花のように可憐にいけないのが男だよ・・・・。
大事なトコロではふんどし締めてってぇ言葉があるように、今の時代、男は勝負パンツ履いて勝負だね。』
お客B『ほぉ~、そこまで話を聞いて行かないのはこちとらの男がすたるってもんだ。早速この目で確かめてくらぁ!!』
~お客B初来店~
お客B『よぉっ、とらんくすや。の親父!!勝負パンツの良いのはないかい?』
親父『へいっ、いらっしゃい!!いろいろ揃っていますよ。勝負にもいろいろ種類がございますけどね。』
お客B『なんでえ そんなに勝負に色々あるのかい?』
親父『そりゃお客さん、相手によって履くパンツが違うんでございます。』
お客B『面白ぇ、聞いてみようじゃねぇか。』
親父『しゃべくりで相手に勝ちてぇときゃ寿司屋の活きの良さですね。うってつけは鮨ネタパンツでございます。
怪物みたいなのが相手のときは、魔よけの紋様の唐草パンツでございますね。神社仏閣の欄間にも唐草紋様が使われてるてぇ話です。』
お客B『あらら、親父、よくしゃべるねぇ、、、、面白ぇ、面白ぇ、そんじゃあそいつをお一つもらっとこうかい。よぉ親父、ついでにも一つ聞いて良いかい?こちとら最近頭のめぐりが悪くってよ。そういう時はどうだい?』
親父『梟(ふくろう)は知恵の神様と言いますからね。それに不苦労とも読めて苦労しないともいうから、一石二鳥ですね。お客様、梟で決まりですね?』
お客B『いいねぇ、いいねぇ親父。んじゃ、それももらっとこうかい。おおっと、もちっと聞いてもいいかい?
新しい商売を始めようと思っているんだけど、よぅ親父、そんなときゃどんなものがいいのかい?』
親父『そりゃあ、お客さん、商売繁盛招き猫と言って昔から猫はお客さんを招く柄として重宝されてますからねぇ。
けれど、これではありきたりですな。
ひとひねり、ひとひねり、と。。。。。
そうだっ!!
人生は大海原。
おっ母さんのお腹からオギャーッ!!と生まれたその日から人生は始まっていますがね、これから新しいことを始めるなんていう人には、なんと言っても鯉(こい)ですねぇ。
鯉(こい)は登れない滝を登り切って龍(りゅう)になるという登竜門伝説がありますなぁ。
新しい商売は山あり谷あり、一見登れなそうな滝も昇りきらなきゃならねぇ。
そんな熱い想いを鯉(こい)に託して突き進む。
これがホントの男の美学。
パンツだけに、男の内面の美学ですなぁ。』
お客B『そりゃあ、ぴったしだ!!それももらっとこうかい。
よぉ親父、こんな事聞いていいかい? う~ん、なんだかちょっと迷ってしまうねえ・・・・。
よしっ、親父っ!!
かーちゃんに隠れて遊びに行くときはどうだい?』
親父『その手のお客さん、実は当店多いんですよ。お客さんも敵の目から逃れなくちゃいけないですね。
お客さんは敵の目から逃れたい、、、つまりご自分の姿をカムフラージュしたいと仰る・・・。
う~ん、ではちょっとこちらは舶来モノになりますが、お客さん、迷彩柄が宜しいのでは?』
お客B『そいつは面白ぇ、自分の姿を隠してしまうってわけかい?なるほどそいつは確かに粋だね、お洒落だねっと。気に入ったっ!!それも買っとこうかい。
んじゃ親父、今日はありがとうよ。邪魔したね。』
親父『あ、お客様、お帰りはくれぐれもお気をつけて。』
お客B『なんでえなんでえ親父、こちとら家までの帰りは真っ直ぐ1本道だい。』
親父『いえいえ、お客様の最後のお買い上げが迷彩柄だっただけに、狐や女郎に化かされて、お道に迷わぬようにと思いまして。』
お後がよろしいようで。
とらんくすや。の親父